「HSPとうつ病ってなんだか似てるんだけど、どう区別したらいいの?」
刺激に敏感なHSPに起こりがちな反応と、うつ病の症状って似ている部分が多いため、明確な違いは分かりませんよね。
HSPは繊細で環境の変化に敏感なため、
- 「眠れない(不眠)」
- 「不安感が強い」
- 「疲れやすい」
- 「頭痛がある」
- 「肩や首がこる」
- 「胃が痛い」
など、うつ病の精神・身体症状とかぶる部分が多いため、専門家である精神科医でさえも診断を間違えてしまうほどなのです。
この記事では理解しやすいように、
- HSPは先天的・うつ病は後天的
- HSPはストレスの軽減、うつ病は治療で改善
- 記憶障害の有無
- 病前・病後に違いがある
- 「死にたい」という希死念慮の有無
という5つのHSPとうつ病の違いについてまとめました。
以下にこの5つの違いについて解説していきたいと思います。
「HSPとうつ病の違いがいまいち理解できない」という方は、ぜひお読みください。
HSPがストレスを溜め込んでしまいうつ病を発症してしまう事はあっても、うつ病を発症した人がHSPになることはありません。
HSPはストレスに対して敏感であるため、非HSPよりも抑うつ状態に陥ったりうつ病を発症してしまう可能性は高いといえます。
「眠れない・気分の落ち込みが激しい・イライラや不安が強い」などの症状が2週間以上続いている場合は、精神科やメンタルクリニックの受診を強く強くお勧めします。
もくじ
HSPは先天的・うつ病は後天的
先天的・後天的という言葉だけをみると、難しく感じられてしまうかもしれませんが要するに、
- HSPは気質=生まれ持ったもの(先天的)
- うつ病=ストレスなので発症する病気(後天的)
とうことです。
HSPは生まれ持っての気質=人それぞれが別に持つ身体的・精神的な性質であるため、治療などをして治すという対象にはなりません。
うつ病は脳の病気であるため、投薬やカウンセリングなどの医学的な治療対象であり、改善することができます。
HSPはストレスの軽減、うつ病は治療で改善
繊細で些細な刺激にも敏感に反応してしまうHSPは、仕事や人間関係から受けるストレスを軽減すること=生活環境を変える・転職をするなどで、辛い心身の状態を改善することができます。
うつ病ももちろんストレスの少ない生活環境の整備が必要ですが、投薬治療やカウンセリング、場合によっては入院などの医療的な対応が必要となります。
HSPがうつ病など心身病気を発症していないのに、入院などの医療的な対応を必要とするということはありません。
HSPの方がストレスを受け続けて抑うつ状態・うつ病になる可能性は高いため、
- 「眠れない日が続く」
- 「意欲が出ない」
- 「頭痛や肩こりがひどい」
- 「生理不順が続いている」
というような場合は、精神科やメンタルクリニックを迷わず受診してください。
軽い抗不安薬や睡眠導入剤の短期間の服用でも、心身のつらい状況が劇的に改善することがありますから(ボクがまさにそうでした)。
記憶障害の有無
記憶障害の有無は、HSPとウツ病との大きな違いの一つです。
HSPで刺激過多で疲れ果てているときには、パニくってしまい仕事の段取りなどが覚えられないということはありますが、それはうつ病の記憶障害とは別物です。
うつ病の記憶障害とは、
- 気が付いたらブランド品を爆買いしていた(覚えていない)。
- 会議の予定をしたことすらすっぽり記憶から消えていた。
- 暴飲暴食をした記憶が消えてしまい激太りしてしまった。
というような「疲れていて頭が回らないので覚えられない」「気持ちに余裕がないから記憶できない」という状態とは明らかに異なる、病的な記憶の障害です。
病前・病後に違いがある
HSPは病気ではなく気質であるため、繊細で刺激に敏感な部分がすっかり変わってしまうようなことはありません。
一方、うつ病は発症前は「明るく外交的で、バリバリ仕事をこなしていた」のに、発症後は「何事にも否定的で、人と会うことを極端に避ける」ようになったりと、病前・病後に明らかな変化が見られます。
「死にたい」という希死念慮がある
希死(きし)念慮とは、明らかな理由がなくても漠然と死を願う状態です。
HSPの「仕事で大失敗をして、多くの人に迷惑をかけてしまったから死んでしまいたい」「人間関係に疲れたから死んだほうが楽かも」という、死にたい気分とは異なります。
もし訳もなく「死んでしまいたい……」という気持ちがあるようでしたら、必ず精神科やメンタルクリニックをすぐに受診してください。
あなた一人では解決できない段階まで、うつ病が進行してしまっている状態と言えるからです。
うつ病の薬(抗うつ薬)に対する大きな誤解
うつ病の薬(抗うつ薬・向精神薬)に対してネットの情報・知識だけに振り回されてはいけません。
精神科医が絶対であるわけではありませんが、医学的な知識のない素人の情報よりは、信憑性が高いことは間違いありません。
といわれても、日本ではうつ病の薬(抗うつ薬・向精神薬)の服用に対する偏見や、ハードルの高さがあることも事実です。
実際ボク自身も、
- 「精神病の薬を飲むようになってしまったのか……」
- 「うつ病の薬は副作用が強いのではないのか……」
- 「精神病の薬って依存性が高いからやめられないのではないのか……」
という偏見に満ち満ちた、自身を苦しめる考えに取り付かれていましたから。
ですが、軽度のうつ状態ではやめに受診することができたため、薬の服用期間は1年弱でしたし、依存することもなく、現在は薬を飲んではいません。
なので、メンタルクリニックを受診してうつ病の薬(抗うつ薬・向精神薬)を飲んだ感想は、「モットはやく受診して、薬を処方してもらえばよかった!」というのが、本当の気持ちです。
質の高いメンタルクリニックの見つけ方
ボクは2つのメンタルクリニックを受診しました。
正直、一つ目のメンタルクリニックは初診の問診時間は15分ぐらい(短い!)でしたし、あまり誠意は感じられませんでした。
なので「もっとボクの話を真剣に聞いてくれる先生の診察を受けたい」という強い思いから、2つめのメンタルクリニックをネットで情報収集をして探しました。
情報収取の結果得られたのは、
- 「予約制で予約を取るのに少々手間がかかる」(人気がある)
- 「初診の問診時間を1時間以上取ってくれる」
- 「薬をやたら多く出さない」
というこの3つを目安にすれば、質の高い精神科医に巡り合える可能性は高いということでした。
この3つの条件を満たせるメンタルクリニック探すと、運がいいことに自宅から自転車で15分ぐらいのところにそのクリニックがあることが分かりました。
早速電話をしてみると、
「大変申し訳ないのですが半年に一度、年に二回、初診の予約を受け付ける日があるんです。
その日時をお伝えいたしますので、その時に電話をして予約をしてください。
ただし予約当日は電話が集中して繋がりにくく、電話をすれば予約が必ず取れるわけではないということをご理解しておいてください」
という事でした。
この話をきいたときは正直「ええっ!!」とショックであった半面、「ここならば間違いないはずだ!」という確信というか安心感というか、「絶対に予約をとってやる」という変なやる気がおきました。
初診の予約受付日は平日であったため、前もって有休をとりました。
確か9時に予約受付開始だったのですが、9時の時報と共に電話をかけても話し中でつながりませんでした。
1時間ほどリダイアルし続けようやく電話がつながったときは、涙が出るほどうれしかったことを記憶しています。
予約受付から3~4ヶ月後に、ようやく2つめのメンタルクリニックを受診することができました(2つ目のメンタルクリニックを受診できるまでの期間は、1つ目のメンタルクリニックを受診することで、うつ状態の悪化をしのぐことができました。)。
初診の時には精神科医の先生の問診を1時間半ほど受けました。
先生はとても物腰が柔らかく、丁寧にボクの話をきいてくれました。
その時の先生の「ずっとギリギリで生きてきたんですね」という言葉に、ボクは思わず泣いてしまいました。
二回目の受診時には臨床心理士の方の検査を30~40分+精神科医の先生の問診30分ぐらいを受けました。
その後は2週間に1度の15分ぐらいの受診を続けて、半年後には「また辛くなったら来てください」と先生に言われ、受診終了となりました。
その後は薬に依存することもまったくなく、数年たった現在も再受診することなく過ごすことができています。
先生はうつ病の薬や眠剤をなるべく減らす方向であったことも印象的でした。
軽度のウツでも要注意!重度のウツに悪化してしまう可能性も
ボクの場合は作業療法士の資格取得をの過程で精神障害について学んでいたため、多少はうつ病に対する知識がありました。
そのため、軽度のうつ病の時に受診に踏み切ることができました。
ですが一般的にHSPはマジメで責任感が強いため、つらい状況でもガンバってしまう傾向があります。
そのため軽度のうつ状態では、
- 「甘えるな!」
- 「気合が足りないだけ」
- 「疲れてなんかいない」
と、逆境でこそ自身にムチを打ってしまい、うつが重症化してしまう傾向があります。
うつ病も他の病気と同じように、軽度のうちに治療したほうが寛解(かんかい:「完治」とは言わずに寛解といいます)が早いです。
抑うつ状態・軽度のうつ病かな?と思ったら、すぐに受診をしてください。
歯が痛くなったら歯科受診、風邪で咳が止まらなくなったら内科や耳鼻咽喉科を受診する感覚で、精神科やメンタルクリニックを受診してください。
精神科やメンタルクリニックはぜんぜん特別なところではありませんから。
HSPにこそ知ってほしい「うつ病はぜんぜん特別なことじゃない」という事実
うつ病の生涯有病率(生きているうちにうつ病になる確率)は、日本では3~7%と言われています(引用:「厚生労働省 みんなのメンタルヘルス」)。
日本の人口から計算すると14~33人に1人はうつ病になるという計算になります。
東京の中学・高校の一クラスの人数は30~40人ですから、クラスに1人はいてもおかしくないという計算になります。
ボクの勤めている病院の職員数は約100人なので、2~3人はうつ病を抱えている方がいてもおかしくないのです。
そう考えると、うつ病になることって決して特殊なことではないんです。
HSPが「自分は弱いからダメなんだ」「私は一人劣っているダメ人なんだ」と、自分自身を追い込むことがまったくのお門違いだということがお分かりになると思います。
HSPは繊細で共感力が高く、マジメで責任感が強いため、刺激の多い現代の日本社会では、うつ病になるリスクは高いといえるでしょう。
- うつ病はあなたが弱いからなるのではないんです。
- うつ病は特別な病気ではないのです。
- 軽度のうちに受診をすれば、はやく寛解するのです。
HSPのあなた。
心身ともに苦しくなったら、決して一人で何とかしようと思わないでください。
つらい状況の時は未来に光があるとは思えないかもしれません。
ですが受診をして、短期間でも服薬をすれば「辛かったあの時」が、劇的に変化する可能性は絶対にあるのです。
これはボクの経験から断言できる事実なのです。